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「食文化伝承の意義」を知る

岩手食文化研究会前代表で医学博士の及川桂子先生は、高度経済成長期で欧米の食文化が大歓迎された時代から、山峡の集落を訪ね歩き、地域の食文化を詳細に記録しました。それは後に「聞き書 岩手の食事」(農山漁村文化協会)という本にまとめられています。

その及川先生に、「食文化伝承の意義って何ですか?」と尋ねたとき、次のように教えてくれました。

「食文化伝承の意義は、単に昔の食を懐かしむことではありません。風土と先人の知恵が一体化した地域固有の食文化の基底には、神々や先祖、家族に対する人々の祈りや願い・感謝そして愛があります。
食は、命を育むだけでなく、心と絆を育むものです。心と絆を育むための食のあり方は、①家族で協力して食卓作り②家族揃っての食事、が欠かせません。

現代は飽食の時代であり、流通や冷蔵技術の発達から、保存食の必要性は薄れています。しかし、食糧・エネルギーの多くを外国に依存するなかでの飽食であって、紛争や温暖化・異常気象の影響等により、食料不足の時代が来る可能性は大いにあります。

もし先祖代々受け継いできた食糧保存・調理(お腹を満たすと共に、限られた食材で美味しく食べるための知恵も)を私達の世代が放棄してしまえば、将来の世代を見殺してしまうことになりかねません。飽食の時代にあればこそ、食の大切さを認識し、伝統の技術を受け継いでいかなくてはならないのです。」

3月の大震災の後、電気のない生活の中で、及川先生のこの言葉を痛感しました。そして、今年は地域に伝わる食や農の技を記録することをテーマとして、スローフード岩手の活動を行っています。それが、震災を忘れないためのささやかな行動でもあります。


と、言うわけで、先日のレポートが完成しました。  
田舎生活体験記第3弾「アッカの豆腐はうんめぇの!
「食文化伝承の意義」を知る_b0206037_18431698.jpg

地域の技を、美味しく味わいながら、みんなで守り伝えていきましょう。
by kyounoinaka | 2011-11-22 18:55 | 家族の食卓・地域食