北海道占冠村「持続可能な農業視察団」其の一
2012年 01月 28日
シムカップという聞きなれない地名は、「とても静かで平和な上流の場所」を指すアイヌ語「シモカプ」に由来するそうです。札幌・旭川・帯広のほぼ中間地点にあり、総面積は571平方km、人口約1200人で、森林面積が94%だそうです。
(岩泉町は992平方km、人口約11000人、森林面積は同じく94%です。)
視察団のリーダーは「スローフードフレンズ北海道」のメンバーとして昨年2月に来町し、その時の感動を占冠村の仲間と共有したいということで、今回の視察となりました。
受け入れる我々は、「何もこんなに寒い時期に!」と思いましたが、何と占冠村では昨日-31度まで下がったというから驚きです。-10度の岩泉は、暖かく過ごしやすいのかも知れません。
さて、「道の駅のだ」で待ち合わせ、最初に訪れたのは持続可能な農業を極めつつある「田野畑山地酪農牛乳」の「志ろがねの牧」です。代表の吉塚公男さんに牧場を案内していただきました。

1977年に千葉県から単身田野畑村に移り住み、山を切り開いて牧場を始めたこと、「楽農」のはずが「苦農」になったこと、それでも奥さまとの出会いや子どもたちに恵まれ、経済効率とは違う豊かさへとたどりついたことなどを話していただきました。
「自然の摂理の中で命を営ませてもらっている」という言葉が、とても印象に残りました。
続いて、田野畑山地酪農の元祖「くがねの牧」です。まず熊谷隆幸さんのお話。
農大を出て故郷田野畑村に帰り、植物学者楢原恭爾先生との出会いから山地酪農の道を歩み始めたこと、村役場や農協など、地域の方々の惜しみない協力に支えられて田野畑山地酪農の基礎を築いたこと…穏やかな語り口で、誰からも慕われる人柄が感じられました。

2代目で現在の経営を担う宗矩さんに、雪の舞う放牧地をご案内していただきました。山地酪農だけでなく、これからの村づくりについてのお話を伺うことができ、占冠の皆さんも大いに共感していました。
ここで田野畑に別れを告げ、岩泉に向かいます。
「道の駅いわいずみ・レストラン大地工房」で昼食を食べ、中心市街地にある「てどの蔵」に1時間遅れで到着です。
「てどの蔵」は機織りや藁草履作りなど、昔ながらの「てど=手業」を持った職人さんが、その技を実演している施設です。
「農業視察とは関係ないんじゃないの?」と思うかも知れませんが、職人さんたちの話を聞いていると、「持続可能な暮らし」のヒントがあちらこちらに見受けられます。それは、例えばかまどで使う薪であったり、山菜やキノコ採りに使う竹かごであったりします。

視察団の中には、ヒグマやエゾシカを撃つ現役の猟師さんや自然ガイドの方がいましたが、真剣な眼差しでかごを見つめていました。
岩泉町や田野畑村には、都会の豊かさとは違う次元で、未来につながる持続可能な暮らしの基礎がたくさん受け継がれています。
【其の二へ続く】