北海道占冠村「持続可能な農業視察団」其の二
2012年 01月 29日
てどの蔵からぶらぶらと商店街を散策し、「糸ばた工房」へ行きました。ここでは大震災からの復興支援活動の一環として「織り織りのうたプロジェクト」に取り組んでいます。
このプロジェクトは東京のヨガ教室の支援を受け、岩手の伝統工芸「裂き織り」を通して被災地に手仕事を生み出し、出来上がったヨガマットの販売によって被災地を支援するものです。

「裂き織り」というのは、古くなった着物を裂いて織り直し、2つとない風合いを持った新しい着物を作る伝統工芸ですが、ここでは支援物資として届いた古いTシャツを裂き、ヨガ用のマットに作り直しています。プロジェクトを始めた頃はヨガ教室の生徒さんからの注文が大半でしたが、今では「赤ちゃんの昼寝用に」「居酒屋の座布団に」と注文をいただき、現在50枚ほど予約待ちの状態だそうです。
外に出ると夕方の空に雪が舞っていました。これから山の暮らしの中で短角牛を生産する農家を訪ねる予定でしたが、予定を変更し、本日の宿・かむら旅館に向かうことにしました。夜は視察団の皆様と地域住民との交流会です。

この旅館の料理は一年を通して安家地区の森の恵み、川の恵みが惜しみなく使われていることで有名ですが、今夜は特別に久慈市にある短角牛肉専門の肉屋さんが料理人として招かれ、短角牛肉と安家の食材を生かした創作料理を作ってくれました。
どれも素晴らしい料理でしたが、特に印象に残ったのは、短角牛のレバーと安家地大根を使った「短角レバニラ」です。安家地大根は熱を加えると辛みが消え、甘みが引き立ちますが、太めの千切りにしたことで辛さが残り、レバニラとの相性が抜群でした。

さて、料理を食べながら、一人一人自己紹介です。
例えば、様々な村おこしの企画を行い、大自然の中で活躍する山岳ガイドさんのお話。落下傘部隊で過ごした若き日、アジア人と欧米人の冒険に対する考え方、そして岩手のリンゴの思い出…

あるいは、あっちの山から安家の山に嫁ぎ、子どもが生まれ、慌ただしい生活が続いてきたこと。そして今、子どもたちが嫁ぎ、数十年ぶりに夫婦二人のお正月を迎えたこと。懐かしい家族での食卓…

ヒグマやエゾシカを撃つ森の狩人さんも来ていました。ここ数年北海道ではエゾシカが増え、農業被害を防ぐため「有害駆除」が行われていますが、駆除したシカは廃棄されるか、仕方なく食べられるのがほとんどだそうです。狩人さんは、命をいただくのだから、無駄なく、美味しく食べてやりたいと考え、一撃で倒し、すぐに血抜きをして皮を剥ぎ、解体するそうです。

お土産にエゾシカのヒレ肉をいただきましたが、獣臭さは全くなく、自然の草木だけを食べて育った最高の赤身肉でした。
占冠の皆さんは、口々に岩手の、岩泉の暮らしの豊かさ、素晴らしさを讃えてくれました。普段見過ごしてしまう日常の中に、自然と調和した「持続可能な暮らし」があること、言い換えれば暮らしの原点があることに、改めて気付きました。この貴重な財産を守り、次の世代に引き継いでいくことが、私たち中間世代の役割なのでしょう。
占冠の皆様は、今日沿岸被災地を視察し、仙台空港から北海道に帰りました。
お忙しい中、岩手に勇気と希望を届けてくださりありがとうございました。ぜひ「大人の遠足・占冠ツアー」実現したいと思っております。