雪の日のサイクリング(2)
2013年 03月 24日
川沿いの道にはまだ若い並木があって、膨らみ始めた蕾にも冷たい雪が降っています。
「雪はやみそうにないな。普通こんな日にサイクリングはしないよなぁ。」と思いつつ、車のめったに通らない田舎道を、彼女と並んで走りました。この先に廃校となった分校があり、今は顔中髭だらけのおじさんが家具工房にしています。

手袋をしていても手はかじかみ、雪を受けて顔が凍りついた頃、ようやく赤い屋根の分校に辿り着きました。しかし、周囲には車も足跡もなく、おじさんがいないことはすぐにわかりました。薪ストーブにあたりながら、家具作りの話を聞くという今日の計画は白紙になりました。
「さぶい?」
「だいじょうぶ。」
「…」

キャンプ用のストーブをつけ、お湯を沸かしてコーヒーを飲んでも、芯まで冷えた体は温まりません。彼は彼女に申し訳なく、どうしていいのかわからなくなって、校庭の鉄棒に足をかけぶら下がりました。
しかし逆さまになった世界にも、雪は降り続けていました。
