岩泉町安家、日本最後・短角牛のいる山村の原風景
2013年 05月 21日





1,000m級の深い山々に囲まれ、現在でも独自の山の暮らしが伝わる岩泉町安家地区では、明治時代から短角牛の林間放牧が行われていました。古い資料をたどると、
「飼料ハ蕎麦桿稗桿藁ノ類及ヒ味噌百目(一日ノ量)ヲ與ヘ五月下旬ヨリ十月下旬マテハ之ヲ野ニ放ツ」
と記されている通り、短角牛親子を山の放牧地に放つ「山上げ」が春の風物詩でした。
しかし、平成3年の牛肉輸入自由化により赤身が特徴の短角牛肉は大打撃を受け、子牛価格は暴落(平成元年に平均23万円だった子牛市場価格は、平成5年には8万円台まで下がりました。)、短角牛とともにある山の暮らしを維持することが、非常に難しくなりました。
それでも、岩泉町で今日まで短角牛純粋種を守ってきたのは、短角牛発祥の地としての誇りがあるからではないかと私は思っています。
「日本の畜産の中で、短角牛は最も原点に近い牛と言えるのではないか。黒毛和牛は人間が手をかけないと育つことができなくなってしまったが、短角牛はこの地で育ってきた牛で、短角牛がいるからこそ山村の暮らしが守られている。
そのことを多くの人に知ってもらいたいし、短角牛を食べることで、山村の暮らしを支えていただきたい。」(安家畜産改良組合長)
近年は短角牛肉の美味しさ、短角牛の素晴らしさを多くのお客様に評価していただけるようになりましたが、今後ともご支援をよろしくお願いします。
※ 現在の「山上げ」は牛舎からトラックで放牧地まで運搬するのが一般的ですが、安家地区では、短角牛親子が町道から林道を歩いて山の放牧地に登っていきます。(町道は「牛優先道路」となります。)今年は約30頭の母牛とその子どもたち、そして1頭のオス牛(種牛)が山に登って行きました。