スペイン料理Mitad Y Mitad にて「いわての在来作物を楽しむ会」
2013年 11月 25日
在来作物とは一般的に「その土地で世代を超えて受け継がれている作物」のことで、岩泉町には「安家地大根」「南部の地ウリ」「三階ネギ」や豆・雑穀など様々な在来作物が伝えられています。
今回の食事会は、「今、なぜ在来作物を守る必要があるのか?」というテーマについて考えるとともに、個性的で味わい深い在来作物を、美味しく楽しく食べるために開催しました。
まずは農村社会学者で日本大学生物資源科学部の川手督也教授(農学博士)が「農業における生物多様性とスローフード」をテーマにスライドを使って解説。アイルランド大飢饉を引き起こしたジャガイモのエキ病を例に、「種」の遺伝的画一化の危険性を話した後、多彩な「命」の賑わいが新しい豊かさの尺度になると力説されました。
▼遠野産「烏骨鶏卵」 烏骨鶏のトルティージャ
続いて、ヨーロッパ各地の家庭料理を学び、現在横浜で料理教室を開催しながら日本各地の在来作物の魅力を発信している黒川陽子さん(KYキッチン)が、土地の風土に根ざした味わい深い在来作物は「地域の宝」であるとお話されました。
▼雫石産「石川早生丸」 田村さんの里芋のパタタヌブラバス
これまで在来作物は流通に不向きで、個性が強すぎると敬遠されがちでしたが、「アル・ケッチァーノ」(鶴岡市)奥田政行シェフや「ロレオール」(奥州市)伊藤勝康シェフらのご活躍によって、その個性を生かした地方ならではの料理が生み出され、注目されるようになりました。
▼岩泉産「短角牛」「安家地大根」・遠野市「遠野カブ」
短角牛肩ロースソテー 焼き野菜を添えて
シェフ自らがお忙しい中、時間を調整して生産現場に足を運んでくださることは生産者にとっても大きな励みとなります。「ミタイミタ」水野拓郎シェフには今回の食事会に向けて岩泉町・遠野市の生産者を訪問し、地域の自然や風土を感じた上で、料理メニューを考えてくださったのですから、これほど嬉しいことはありません。
▼安家地大根生産者エツコさんと水野シェフ
「遠野ふるさと野菜」代表の高橋義明さん(遠野市)、自然栽培農家で「Cosmic Seed」を主催する田村和大さん(雫石町)、地域ジャーナリストや獣医さん、そして岩泉町の若者たちなどが集い、とても賑やかなひと時。
▼岩泉産雑穀各種 雑穀パエジャ
ほんの数年前まで「時代遅れの作物」とまで言われた在来作物に、今、新しい価値を見出してくださる方々がいます。でも、よく考えてみると、家庭の味として大切に守ってきた地域の方々は、在来種の魅力を誰よりも知っていて、手間を惜しまず、現代に伝えて下さっているのかも知れません。
▼遠野産「モッツァレラチーズ」・岩泉産「すたれ小豆」
多田農場のFiord’latteとすたれ小豆のクッキー
このような素晴らしい食事会を企画して下さった医師でシニア野菜ソムリエの宮田恵さん、そして、一人で定員以上の参加者に料理を作って下さった水野拓郎シェフに多大な感謝を込めて、「いわての在来作物を楽しむ会」の報告といたします。
「Mitad Y Mitad」 盛岡市材木町3-13 あずぱる館2F
「よ市」で知られる材木町の中ほどにあり、人気の「光原社」もすぐ近く。
こじんまりとしたお店で、「人に教えたくない」(教えるのがもったいない)と思えるような素敵なレストランです。
(追伸)
本日11月25日の岩手日報紙面にも掲載していただきました。美味しい料理を目の前に、真剣に取材して下さったS記者にも感謝感激です。