人気ブログランキング | 話題のタグを見る

短角牛と人が守る「安家森」芝草原の奇跡!

短角牛と人が守る「安家森」芝草原の奇跡!_b0206037_09432530.jpg
昨日、いまも天然芝草地への短角牛放牧が続く「安家森」へと久々に登ってきました。今年は7頭の短角牛が放牧され、標高1,100mの放牧ライフを満喫しています。
短角牛と人が守る「安家森」芝草原の奇跡!_b0206037_09560408.jpg
岩泉町のほかの短角牛放牧地は、多くが地域共同の畜産基盤として、牧野組合を作って運営されています。
いずれの放牧地も1980年代の広域農業開発事業(北上山系開発)を通じて収量の高い牧草地や、看視小屋・道路・牛の水飲み場などが整備され、そして天然の広葉樹林の林間放牧地を組み合わせて牛を放牧しています。

一方で、「安家森」は場所が安家地区の最も奥であるためか、そうした近代化の投資は行われませんでした。牛肉輸入自由化(1991年)の際に、短角牛の減少により牧野組合での放牧利用が中止されました。しかし、草原の景観は牛の放牧で牛が草を食し、牛糞が肥料になるという循環で成り立つもの。放牧中止されると、次第に草原は伸び放題となり、灌木も侵入し、自然の流れとはいえ景観は変化していきます。
こうしたなか、昔からの天然芝草地と山頂付近の文化的景観を、安家地域のアイデンティティとして守りたいと、地域内外の人たちの想いが実を結び、「安家森の会」による牧野サポーター制度により、放牧が復活。現在も頭数は少ないながら、放牧が続けられています。
近代化の投資が行われなかったことが逆に幸いして、さらに、人々の想いが実って、藩政時代からも続くであろう歴史的文化的景観が守られたことになります。
短角牛と人が守る「安家森」芝草原の奇跡!_b0206037_09460644.jpg
ところで、岩泉町のほかの短角牛放牧地(牧野組合の放牧地)でみられるのは、多くがお母さん牛、その春生まれたばかりの子牛、そして種牛1頭の姿です。(上の写真は大川・兜森牧野)
短角牛と人が守る「安家森」芝草原の奇跡!_b0206037_09551740.jpg
一方で「安家森」に放牧されている牛は主に昨年生まれて、肥育2年目の牛たちです。お母さん牛から乳離れした牛たちが、2回目の放牧に入っているのです。つまり、2シーズン放牧(通常より2倍放牧)の特別な牛たちです。
短角牛と人が守る「安家森」芝草原の奇跡!_b0206037_09541690.jpg
しかも、安家森はその環境が素晴らしい。
・昔の放牧のありかたを今に受け継ぐ天然芝草地&林間放牧です。
・この場所は、芝の生える一般的な標高の限界を超えているといわれ、学術的にも貴重な場所です。
・この時期は芝草地に黄色いウマノアシガタの花が咲き、お花畑に群れる牛たちの姿が見られます。
短角牛と人が守る「安家森」芝草原の奇跡!_b0206037_09565577.jpg
安家森牧野のなかにはささやかな清水が湧きだし、短角牛たちの水飲み場になっています。高い山に生えるダケカンバの木が生え、少しゆがんだ木々からは冬場ここがたいへん厳しい環境であることがわかります。
短角牛と人が守る「安家森」芝草原の奇跡!_b0206037_10004312.jpg
この安家森牧野のなかをトレッキングコースが通っており、「安家森」「遠別岳」2つの山頂を目指すことができます。山頂に行くためには、牛が逃げ出さないように設置されている牧柵の扉を開けて、登山道を登ってゆきます。開けたら、必ず閉めてくださいね。
昨日は安家森の山頂に行ってきましたよ。この石がゴロゴロした景観も冬場の厳しい環境によるものです。
短角牛と人が守る「安家森」芝草原の奇跡!_b0206037_10031275.jpg
安家森山頂からは岩手山・姫神山、写真には写っていませんが早池峰山と岩手の名峰が並んで見える大パノラマ。さらに七時雨山や北上山地の緑のパノラマ、眼下の放牧地など変化に富んでおり見ていて飽きない景色です。
短角牛と人が守る「安家森」芝草原の奇跡!_b0206037_10044004.jpg
なんと高山に生える植物であるハイマツが山頂には生えています。ほかにもさまざまな高山植物をこの周辺では観察することができます。
短角牛と人が守る「安家森」芝草原の奇跡!_b0206037_10062298.jpg
この放牧地の景観は、【安家森の会】による市民サポーター制度で守られています。会員は年会費8,000円で、牧野の管理費用に充てられるほか、会員特典として、毎年短角牛肉・安家地大根などの特産品や、放牧地の近況などを伝える会報も届きます!!

お問い合わせ先:安家森の会事務局(岩泉町役場安家支所)
TEL 0194-24-2111

by kyounoinaka | 2016-06-30 10:15 | ◎もの いわいずみ短角牛と生きる